大分県立日田高等学校

モウソウチクが日田を覆う!?

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大分県立日田高等学校

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レポート・論文

研究の概要

日本各地でモウソウチクの繁殖が問題となっている。このことが、森林の生態系の単純化や土砂崩れが起きやすくなるなどの問題を引き起こしているのではないかと推測した。そこで、竹の根の長さ、生育本数、繁殖本数の予測などの調査を行った。

生徒のアウトプット

実践の背景
概要

 現在、日本各地でモウソウチク(以下、タケと略す。)の繁殖が問題となっている。
 このことが、森林の生態系の単純化や土砂崩れが起きやすくなるなどの問題を引き起こしているのではないかと推測した。そこで、以下の4つの調査を行った。

(1)タケの根の長さを計測する調査では、タケの根の長さは平均134㎝であり、広葉
 樹の根の長さの約7分の1であった。
(2)毎年のタケの生育本数の調査では、1年間に100㎡あたり約13本のタケが
 侵入していた。
(3)2020年に生えたタケの調査では、100㎡あたり約13本生えていて、
 調査(2)の値に近似していた。また、多くのタケノコが斜面部分に生えていた。
(4)今後の日田市のタケの繁殖本数の予測では、日田市の1年間のタケの繁殖本数は約106,600本と試算された。


研究の目的

 モウソウチクは江戸時代に中国から日本に輸入され、戦後には食糧難を解決するために日本各地に移植された。しかし、現在食料としての利用が少なくなり、竹製品も使わなくなるなど生活様式が変化したこと、また、竹林を管理する人々が高齢化したことによって多くの竹林が放棄され、増えすぎたたけタケにより様々な問題が起きている。
 このことから、広葉樹の保全、今後の日田市のタケの繁殖をシミュレーションし、多くの人にタケの危険性を知ってもらうことを目的とした。
調査・研究内容
研究方法

以下の4つの調査を行った。

⑴タケの根の長さを計測する調査

⑵毎年のタケの生育本数の調査

⑶2020年に生えたタケの本数の調査

⑷今後の日田市のタケの繁殖本数の予測

調査を行うにあたって、大分県日田市城内公園付近の竹林を調査地とした。調査地はタケの放棄竹林であり、北緯33°19分25秒 東経130°56分51秒に位置する。面積は約2600㎡(図1)

(1)タケの根の長さを計測する調査
広葉樹の根の長さとタケの根の長さを比較し、タケが土砂崩れなどの自然災害に与える影響を予測するために、調査地内の5か所で1年目のタケの根をシャベルで掘り、根の長さを計測をする。

(2)毎年のタケの生育本数の調査
1年間に森林に侵入したタケの本数を明らかにするために、竹林内に10m×10mのコドラートを3ヶ所設置し、そのコドラート内の、1年目、2年目、3年目及び4年目以降のタケの本数及びその分布を調べる。この実験を行う上でタケの年数判断の基準を定めた。
1年目…節の下に白い粉がついておりタケノコの皮がある。
2年目…タケノコの皮が腐食し始めており、節の下はまだ白い。
3年目…稈に棘のようなものがあり、節の下に白い粉が残っている。
4年目以降…タケの根元が茶色で表面に汚れが目立つ。
以上のように基準を定めた。(図2)

(3)2020年に生えたタケの本数の調査
調査(2)で得た1年間に新たに生えてくるタケが100㎡あたり「約13本」の値の正確性を確認するため、2020年に調査地で新たに生育したタケの本数を調査した。2020年5月26日、竹林内にて新たに生育したタケを地図上に記録し、その分布を調査した。

(4)今後の日田市のタケの生育本数の予測
タケの繁殖を予測して竹林の危険性を示すことを目的に、今後の日田市におけるモウソウチクの繁殖本数の予測を行った。大分県日田市の竹林面積と調査(2)で得た100㎡あたり約13本の値を試算し、日田市内での年間のモウソウチクの生育本数の予測を行った。


研究結果

(1) タケの根の長さを計測する調査
調査した5か所のタケの根の平均の長さは134cmで広葉樹の根の長さの平均約900cmよりもかなり短いことが分かった。(表1)

(2) 毎年のタケの生育本数の調査
タケの年数判断の基準をもとに調査すると、コドラート内の分布図および年数別本数は図3のようになった。よって、1年間に100㎡あたり約13本のタケが侵入していることがわかった。

(3) 2020年に生えたタケの本数の調査
2020年に新たに生育したタケの分布は図4のとおりである。これを地図上で10m×10mのコドラートを重ね合わせ、そのコドラート内で2020年に新たに生育したタケの本数を調べたところ、どのコドラート内でも約13本に近似していた。また調査地は階段状の地形になっており、図4の四角で囲んだ部分の斜面にタケが多く生育していることがわかった。

(4) 今後の日田市のタケの生育本数の予測
大分県日田市では竹林面積が7820,000㎡で、調査(2)の結果である100㎡あたり約13本のタケが生育することから試算すると、大分県日田市では1年間に約106,600本のタケが新たに生育することが予測された。


5.考察

(1) タケの根の長さを計測する調査
根の浅いタケの繁殖により土壌の治水効果が失われ、地盤が緩むことで土砂崩れ等が起きやすくなると考えられる。

(2) 毎年のタケの生育本数の調査
それぞれ3か所の放棄竹林の比較すると、
1か所目では3年目に生えたタケの割合が高く3年目以降に生えたタケの割合が減少していることから、3年前のコドラート内では、タケの密度が飽和状態に近い状態になり、3年目以降ではコドラート外に繁殖していったと考えた。
2か所目では、1年目から3年目までのタケの本数の割合に変化がなく、毎年同じ本数ずつ繁殖をしていったと考えた。
3か所目は、3年目のタケの割合が多いものの、三年目以降はタケの割合が減少していることから、1か所目同様、調査したコドラート以外にも繁殖を伸ばしていると考えた。また、1か所目の棒グラフと比較すると、1年目の割合が2年目よりも減少していることから、3か所目のコドラートではタケの本数が飽和状態に近づきつつあると考察した。

(3) 2020年に生えたタケの本数の調査
「約13本」の値に近似していた。このことから、調査(2)の結果は正確性が高いことがわかった。
また調査地の地形は階段状の地形になっており、写真四角で囲った部分の斜面にタケが多く生育することがわかった。(図4)
平地ではなく斜面にタケが多く生育する理由を竹林内の根の密度が関係しているのではないかと考察した。図5は竹林内を表ている。平地ではタケ以外の植物が多く生育し、根の密度は比較的大きい状態にあると考えた。また、斜面では風化が起きやすいことや、土壌が乾燥しやすいため、タケ以外の植物にとって良い生育環境ではないと考えた。しかし、タケは地下茎で繁殖するため、そのような影響を受けにくく、平地より比較的根の密度が小さい斜面に地下茎を伸ばしてきたと考えた。また、平地よりも斜面のほうが光を受け取りやすい結果、受け取ったエネルギーを用いて新たなタケが斜面に多く生育すると考えた。(図5)

「約13本」の値に近似していた。このことから、調査(2)の結果は性が高いことがわかった。
また調査地の地形は階段状の地形になっており、写真四角で囲った部分の斜面にタケが多く生育することがわかった。
結論
総合考察・結論

(1)タケの根の長さが広葉樹よりも大幅に短いことがわかり、土壌の治水効果が失われ、土砂崩れが起きやすくなるとわかった。しかし、タケの根の長さが地域や気候によって違ってくることや、土砂崩れの要因が単にタケの根の長さだけでなく、土壌の保水度、傾斜角などを視野に入れ、再度調査が実施できるとよいと思った。

(2)1か所目、3か所目では3年前にタケの繁殖が飽和状態になり、調査したコドラートの範囲以外にも繁殖を伸ばしていったと考察した。しかし、タケの年数の判断基準には調査者の主観的な判断も多少含まれ、3年目と4年目の判別に曖昧な部分があることから、正確な数値を出すためにはより客観的なタケの年数の判断基準を再決定する必要があると思った。

(3)斜面にタケが多く繁殖することで、タケの根が短いことも総合して考えるとさらに竹林で土砂崩れが起きやすくなると考えられる。そこで、タケと土砂崩れの関係性を調べるために平地に加え斜面に焦点を当てた調査が必要になると考えた。

(4)以上の研究を通して、タケの繁殖を抑えるためには、竹林内に生育するタケをとること、広葉樹林に近いタケをとること、そして切り取ったタケを活用していくことが重要であると示唆された。

(5)タケの危険性を学校内だけでなく市民の方々にも知ってもらうため、タウン誌の「日田スタイル」さんに協力してもらい、2020年9月に掲載をお願いし発行して頂いた。

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