生徒から学ぶICT活用指導力

取材者プロフィール
菅 淳司
菅 淳司すが あつしさん
所属・役職
指導教諭(教科:数学・情報)
学校名
大分県立臼杵高等学校

GIGAスクール構想の中で、児童生徒の情報活用能力を高めていくためにも、教員のICT活用指導力を向上させることはとても大切なことです。現在の大分県の教員の中で、50代の教員の数は最大の割合を占めています。今回は、50代の教員として、大分県立臼杵高等学校に勤務されている菅淳司先生に、どのようにICTを活用しているのかをお伺いしました。

大分県立臼杵高等学校

大分県立臼杵高等学校

菅 指導教諭のご紹介

菅先生は現在54歳で、大分県で最も多い50代教員の一人です。数学の他に情報の免許も持っており、臼杵高校では、数学だけでなく、情報の授業も担当されているそうです。指導教諭という立場で校内外の授業改善に尽力しつつ、校内のICT担当もしながら、数学や情報の授業を行っているそうです。

インタビューに答える菅先生

インタビューに答える菅先生

ICTの活用が「当たり前」な授業

菅先生は日々の授業においてどのようにICTを活用しているのでしょうか。

菅先生:生徒も私も当たり前のようにiPadを使っています。臼杵高校では、授業支援システム「MetaMoji Classroom」を活用しており、臼杵高校の教員の活用率は100%です。MetaMoji ClassRoomは紙とペンのように使えるアプリで、臼杵高校の生徒はノートを使うよりもMetaMojiを使って授業を受ける方が圧倒的に慣れています。MetaMoji ClassRoomは生徒にとって文房具の代わりになっているのです。

菅先生:生徒がノートに書いていることはリアルタイムに見ることはできませんが、MetaMoji ClassRoomにはモニター機能があります。生徒が書いていることがリアルタイムに確認できますので、とても良いと思います。授業後に紙のノートを回収して確認しても、その感想はすぐにフィードバックできませんからね。

菅先生は、MetaMoji ClassRoomのモニター機能により、良い回答があった時すぐに共有できるので、クラス全体にスピード感をもってフィードバックできると言っていました。紙のノートだと隣の人に見せるのを嫌がっていた生徒も、iPadだとなぜかお互いの画面を共有するのが当たり前になっているそうです。
生徒にとっても菅先生にとっても、iPadがないと不便で仕方ないというくらいICTを活用する授業が「当たり前」になっていることに驚きました。

考える時間を多く確保できるICTを活用した授業

MetaMoji ClassRoomを使った授業を通して、生徒にはどのような変化が見られたのでしょうか。

菅先生:MetaMoji ClassRoomを使い出した頃は紙が良いという生徒もいましたが、1年も経たないうちに紙ではなく、MetaMoji ClassRoomの方が使いやすいというようになりました。今では生徒の使い方を見て私たち教員が学ぶくらいです。

数学の授業では座標軸を書くことがありますが、MetaMoji ClassRoomを使えば、ノートに書くよりも簡単に、正確に、速く書くことができます。その分、授業をしっかり聞いたり、考える時間をとったりすることができるので、効率が上がり、授業の質が向上しました。
板書したものを書き写す時間がもったいないので、板書は写真に撮ってもらい、その分考える時間を多くとるようにできるのです。

菅先生:生徒はICTの活用方法を思いついたら直ぐに実行していきます。授業で、生徒たちがICTを活用する場面を増やすほど、生徒自身が、「このように使ったらもっとやりやすい」と思いついてくれるのです。そして、すぐに実行してくれるので、私たち教員がその活用方法を見て学ぶことが多いのです。

菅先生はICT活用を苦手とする教員に「生徒の手元を見て学んでほしい」と助言するそうです。菅先生は、研修でICTの活用方法を学ぶことも大切だと言います。しかし、それ以上に、生徒の手元を観察することで、ICT活用指導力を向上させることができると力強く主張されていました。

教員が生徒に教えるという時代から、ICTの授業活用が始まったことで、授業スタイルも変化しているようです。生徒と教師が共に授業を創りあげていくという時代に変化しているように感じました。

授業をする菅先生

生徒たちがICT活用をする際の手元に注目する菅先生

とにかく使うことがICT活用指導力を高める方法

教員がICT活用指導力を高めるために必要なことはどのようなことなのでしょうか。

菅先生:教員はとても真面目なので、「ICT活用指導力の向上」という言葉自体が重いのかもしれません。指導する能力を身につけるというよりも、まずは、ただ使ってみるという方が正しい気がします。

菅先生は臼杵高校の同僚に、ICTに関して分からないことがあったらいつでもすぐに質問するように伝えているそうです。また、臼杵高校では、教員、生徒、学年を問わず、分からないことを聞き合う風土ができているそうです。iPadを使ってみて、失敗したり、困ったことがあったりしたとしても、改善の方法を聞くことができる環境が整っていれば、ICT活用指導力は高まっていくそうです。菅先生は、大分県ICT教育サポーターの存在は、非常にありがたいものだと言っていました。

菅先生:ICT教育サポーターは週に1回、臼杵高校に来てくれます。サポーターの方が来てくれることで、教員は、ICTについて、わからないことを質問できます。とてもありがたい存在なので、学校への訪問頻度やサポーターの人数を増やしてほしいと思います。教員のICTの活用指導力を高めるためには、とにかく使ってみることが大切です。そして、わからないことがあったらすぐに聞ける環境も大切だと考えています。

新任教員にMetamojiの使い方を指導する菅先生

新任教員に対し、MetaMoji ClassRoomの効果的な活用について指導・助言を行う菅先生

ICTの便利さと怖さの両輪を知って欲しい

菅先生はどのような想いをもってICTを活用しているかお伺いしました。

菅先生:最近はSNSの普及により、情報モラル教育が必要になってきました。ひと昔前は、とっくみあいのケンカが普通でしたが、今はLINEやInstagram上での誹謗中傷が問題になっています。今の生徒たちは、このような情報社会の中で正しいICTの使い方を身につけていかなければなりません。私は生徒たちには、学校でたくさんICTを使い、失敗を繰り返しながら、学んでほしいと思っています。

ICTを規制され、失敗も経験することなく、正しい使い方を体験的に学べないまま、生徒が社会に出ていくことは怖いことだと菅先生は言います。学校では、失敗しても良いので、たくさんの失敗から学び、ICTの便利さと怖さの両輪をきちんと学んでという想いで、菅先生は日々授業に取り組まれているそうです。

ICT教育は教員の使命

菅先生に、同世代の50代教員に対して伝えたいことをお伺いしたところ、力強く語っていただきました。

菅先生:生徒にSociety5.0の世界に対応できる能力を身につけさせることは、私たち教員の使命です。時代も教育も日進月歩で進化しています。ICTに苦手意識があるからといって、ICTを活用しない授業スタイルを退職まで貫くなんて大間違いですよ。目の前の生徒たちの情報活用能力を育成するためにも、学び続けることが大切だと思います。

菅先生は、現在54歳。時代が変化するスピードはとても速く、その変化に対応するべく、教員自身も成長を続けていく必要があると語ります。

まとめ

菅先生にお話を伺うことで、年齢に関係なく、ICTをとにかく使ってみるという最初の一歩を踏み出すことができれば、ICT活用指導力は高まっていくのだと感じました。
日々進化するこの時代の変化についていくために、「生徒と共に学ぶ」という素晴らしい方法があるということを、学ぶことができました。