ICTを活用した授業づくりを支えるICT教育サポーター

取材者プロフィール
植木 幸子
植木 幸子うえき さちこさん
所属・役職
ICT教育サポーター
松本 智子
松本 智子まつもと ともこさん
所属・役職
ICT教育サポーター

今回は、実際に県立学校で活躍するICT教育サポーターである植木幸子さんと、松本智子さんのお2人に話を伺いました。ICT教育サポーターは、令和4年5月から、大分県内のすべての県立学校に対して、学校訪問を行い、先生方のICT活用のサポートを行っています。

ICTに苦手意識を持つ先生方もいる中、どのようにサポートを行っていったのでしょうか。

先生方と一緒に、学びの場を作っていくことへの意欲的な想いと具体的な実践を伺うことができました。

ICT教育サポーター事業の開始当初から活躍するお2人

今回インタビューしたお2人は大分県のICT教育サポーター事業の開始当初からICT教育サポーターとしてのキャリアをスタートしています。

植木さん:現在私が担当しているのは4つの県立学校です。大分県立大分雄城台高等学校、大分県立大分上野丘高等学校、大分県立由布高等学校、大分県立由布支援学校ですね。それぞれの学校に、週に1回のペースで訪問しています。令和4年5月にこの仕事をスタートしたので、約1年半が経つというところでしょうか。

ICT教育サポーターである植木幸子さん

ICT教育サポーターの植木幸子さん

松本さん:私が担当しているのは、大分県立盲学校と大分県立大分鶴崎高等学校の2校です。植木さんと同様、週1回ペースでそれぞれの学校を訪れています。

ICT教育サポーターである松本智子さん

ICT教育サポーターの松本智子さん

ICTに関するつまずきを解決する幅広い業務内容

ICT教育サポーターとして行っている業務内容はどのようなものなのでしょう?

松本さん:生徒教室、PC教室、職員室や寄宿舎などで、パソコン、タブレット、電子黒板、支援電子機器等を使う際のサポートを幅広く行っています。先生方が授業の準備をしている段階で、ICT機器の使い方をサポートすることもありますし、もちろん授業中にもサポートすることもあります。また、学校で行う研修でもICT機器を使うことが多いので、活用のサポートをしていますね。

植木さん:授業でICTを活用する場面でのサポート以外にも、エクセルやワードでのつまずきなどICTに関与している疑問やトラブルであれば、幅広く対応しています。先生からのご依頼で、授業で使用するための教材の作成・準備をしたり、教員対象のICT研修を開催させていただいたりすることもあります。

教員を対象としたICT研修を行う様子

教員を対象としたICT研修を行う様子

松本さん:ICT教育サポーターとして、成長し続けるために勉強をすることも幅広い意味では業務といえます。基本は個人で勉強をしているのですが、月に1回はサポーター全員が集まる定例会とフォローアップ研修が開かれ、様々な質問や相談を共有しています。基本はオンラインですが、年に2回は直接顔を合わせていますね。その他にも、ChatGPTの勉強会をしたり、自主研究会を行ったりしています。

植木さん:疑問を解決して学び続けるという点でいうならば、Slackというチャットツールを活用したICT教育サポーター間での情報交換が役立っています。わからないことを相談すると、すぐにいろんな方々が回答してくれて、個人で悩まず進めることができます。ICT教育サポーター同士は互いに違う学校で勤務しているので顔を合わせる機会は少ないのです。それでも、オンラインでは繋がっているという心強さを感じながら、取り組めていますね。

先生たちと共に「できた!」を喜ぶ瞬間が、やりがいに

ICT教育サポーターをしていて、達成感や喜びを感じるのは、どんな時なのでしょう?

植木さん:やはり先生が「助かった、ありがとう。」と言ってくれることが、単純に嬉しいですね。担当校によって相談内容は異なります。次々に上がってくる課題に向き合い、学び、解決していきます。解決できた喜びを先生たちと一緒に感じることで、大きな達成感を得ることができるのです。

1つの課題を解決したら、その経験を次に生かせるように工夫も行っています。アプリの使い方の疑問を解決したら、他の先生が同じところでつまずかないように、資料作りをして、事前に伝えています。

松本さん:訪問日の朝、私の机上を見ると、質問や依頼が書かれてある付箋がたくさん貼られています。また、次々に質問を投げかけてくれる先生がいます。私が来るのを待ってくれていたのだと感じ、嬉しく思います。

私の担当校の1つは盲学校なのですが、盲学校ならではのサポートをすることがあります。先生の中には、弱視や全盲の方もいらっしゃいます。目が不自由な方だと狭い画面のスマートフォンとは違い、広い画面のタブレットはカラムやカーソルの位置などがわかりにくく、操作が難しいのです。タップする位置が微妙にちがって反応しないため、横について「あと1センチ、右斜め上にずらせば押せますよ」と位置の修正を伝えます。それを毎週、何度も何度も繰り返して位置を覚えてもらい、タブレットをスムーズに使えるようになったということがありました。「ここまで教えてくれる人はいなかった。ありがとう。いてくれてよかった。」と言ってもらえた時は、本当に感激しました。

アンケートでも「ICT教育サポーターのおかげでICT機器を使えるようになった」という感想が何件も書かれているとのことで、このような反応が大きなやりがいになっています。

ICTサポーターとして先生にパソコンの使い方をアドバイスする様子

先生にパソコンの使い方をアドバイスする様子

教育現場の最前線にいて感じること

実際の教育現場で生徒や先生方を見て、思うことはありますか?

植木さん:生徒たちのICT機器を使いこなしていく吸収力に驚くことがよくあります。

最近のことでいうと、外部講師を招いた授業でのエピソードがあります。外部講師がパワーポイントで作った資料を、生徒がタブレットで受け取り、3回の授業を通して、スライドを完成させるという進行でした。最初の授業では、パワーポイントを開けない生徒がいて、スムーズにいかないところも多くあったので、先生と一緒に操作のサポートをして進めました。でも、2回目になると生徒のみんなが操作を覚えていて、どんどん作業していく。生徒同士で教え合ったり、意見を言い合ったりもして、みんなよく考えて、使いこなしていました。

そして、3回目の授業では、代表者が資料を取りまとめて、スクリーンを使って発表したのです。初回からの流れを通して、使いたいけど使えない状況から、できるようになる現場に立ち合うことができて、感動しましたね。

生徒がICT機器を使って考えるのを見守る様子

ICT機器を使って考える生徒を見守る様子

松本さん:先生方の努力も、本当にすごいと思っています。GIGAスクール構想が本格的に始まってからは、先生方がICT機器を活用する場面が増えましたよね。最初はタブレットを操作すること自体が怖いというほど、苦手意識を持っている先生もいました。それでも、マンツーマンで教えていくことで、1年後には使いこなせるようになっています。

先生方は、本当にお忙しい中、タブレットの操作方法やアプリの効果的な活用方法についての知識や技能を身につけようと日々、努力しています。できなかったことが、できるようになった先生には「先生、すごいじゃないですか!」と声をかけ、一緒に喜ぶこともありますよ。

ICTの活用について、元々苦手な方がいるのは当然ですよね。それでも、皆さんが頑張って、時代の変化に合わせた授業を作っている。だからこそ、ICT教育サポーターとして、先生と信頼関係を築いていきながら、共に授業づくりをしていきたいと思っています。

ICT教育サポーターとして先生の質問に答える様子

先生の質問に答える様子

タブレットを使った教育技術を底上げしていくという挑戦

今後、ICT教育サポーターとして挑戦していきたいことを教えてください。

松本さん:先生たち一人ひとりのタブレットを使った教育技術の向上のためのサポートをしていきたいと思っています。苦手意識があり、タブレットの十分な活用にまだまだ踏み出せない先生もいらっしゃいます。気軽に学んでいただけるように、ミニ研修、グループ研修、そしてマンツーマンで教えるなど、学びの機会のバリエーションを作って、先生方に寄り添ったサポートをしていきたいですね。

生徒たちは、デジタルネイティブ世代なので、ICT機器を凄く楽しんで使いこなしていっています。先生方も楽しみながら学んでほしいと思います。先生と生徒、みんなが楽しみながら学んでいけば、相乗効果でよりよい授業になっていくと思います。

植木さん:私は現在4つの学校に行っていますが、最近、あるアプリに関するアンケート結果を通じて、ICTをあまり活用していない先生もいらっしゃることに気づきました。先生がタブレットを使わない理由が、「使いこなせないから」であるなら、その先生の苦手意識を取り除き、サポートすることが重要と感じています。

気軽に質問してくださる先生は、使い方に関する初歩的な質問からはじまり、より良い授業のための方法選択といった高度な質問にレベルアップしていきます。しかし、まだまだ関係性を築けていない先生も多くいます。特に困っていることがなければよいのですが、困っていると言えていない先生がいるかもしれません。先生方と積極的に関わる姿勢を持ち、より気軽に頼られる存在になるように工夫していきたいと思います。

先生方のICTを活用をサポートしていくことが、授業での効果的なICT活用につながり、先生や生徒のためになるということが理想ですね。

ICTに関する研修で先生方の質問に答える様子

ICTに関する研修で先生からの質問に答える様子

まとめ

学校教育の変化の激しさに、先生方が苦労しているという話を聞いたことがある方もいると思います。初めてGIGAスクール構想について知った時、「実際にICT機器の効果的な活用は可能なのだろうか?」という疑問を感じ、不安に思った方もいたのではないでしょうか。

今回、ICT教育サポーターとしての具体的な取り組みや、先生方との関わり合いを伺って、その熱意やきめ細かさに驚きました。ICT教育サポーターは、先生方のよりよい授業づくりを丁寧に支え、優しく後押しする存在であることがわかりました。