『ICT委員会』をスタートさせた上林先生。情報発信を通して児童が学び得るものとは?

取材者プロフィール
上林 昌之
上林 昌之かみばやし まさゆきさん
学校名
別府市立南小学校

学校教育におけるICTの推進は様々な分野で進んでおり、その舞台は委員会活動にも広がっています。今回は、多くの小学校にある掲示委員会を、児童が学校ホームページを利用して情報発信を行うICT委員会に変える提案を行い、実際の運用をサポートしている別府市立南小学校の上林先生にお話を伺いました。ICT委員会とは一体どのような活動を行い、どのような役割を担っているのでしょうか。詳しくお話を伺ってきました。

校内における情報(ICT)担当をする上林先生

まずは、自己紹介をお願いします。

上林先生:別府市立南小学校(以下、南小学校)に勤務している上林昌之といいます。教員歴は今年で11年目になります。大学を卒業した後、出身地である岡山県の特別支援学校で勤務していました。その後、再び大分県に戻り、大分県立の特別支援学校で5年、南小学校で2年勤務しています。特別支援学校で働いている時に、大分県ICTスマートデザイナー育成事業の4期生になった経験があったことや、以前の勤務校で情報教育の推進を任されていた経験から、本校ではICT全体の取りまとめをする役割を任せられています。

別府市立南小学校

上林先生が勤務する別府市立南小学校

「掲示委員会」を「ICT委員会」に変更するという提案

上林先生は、ICT委員会を立ち上げたと伺っています。ICT委員会とはどのような委員会なのでしょうか?

上林先生:まずICT委員会を立ち上げた経緯から説明しますね。元々は掲示委員会という委員会があり、その委員会は校内の壁面や掲示板の環境を整える役割を担っていました。GIGAスクール構想が本格的に始まったこともあり、掲示委員会としてもっとできることがあるように思い、ICT委員会として形を変えることを提案してみました。提案が採用され、ICT委員会としての活動が始まったのは令和5年10月のことです。

具体的な活動は、既にあった学校のホームページを活用して、そこにICT委員会が作った記事を掲載していくというものです。これまでも児童たちは作った作品などを校内に掲示して発信してきていました。それに加えて、校外に発信するという窓口を、委員会という場で行ってみるという取り組みです。インターネットを通して自分たちが考えていることや、持っている情報を発信する機会を設けることは、ICTを使い社会と繋がる経験として意義があると感じたのです。

南小学校では既にSNSを活用して児童が情報発信をしたという実績があったので、ICT委員会の提案も受け入れられやすいのではないかという予測がありました。私が南小学校に勤務し始めた2年前には、総合的な学習の時間の中で、児童たちがInstagramを使い発信を行う実践をしていました。「自分たちの校区にこのような良いところがあります。」ということや、「南小学校ってこのような良いところがあります。」ということなどを授業の中で、SNSを活用し、発信していたのです。南小学校のアカウントとしてフォロワーも1000人以上いて、反応もよく、児童たちもその授業を楽しみ、伝える喜びを味わっていたようです。

先輩の先生が既にICTを活用して地域や校内の魅力発信の実践を行っていたのなら、自分たちの学校ホームページでICT委員会として、記事を作成していくのはハードルが低いと感じたのです。私は、当時も情報担当だったので、学校ホームページの記事を更新することは、仕事の1つでした。いかにホームページを魅力的なものにするかと考えた時に、自分だけではなく、児童たち自身が作成した記事を掲載するのが良いのではないかと思いついたのです。管理職の方々も賛成し、背中を押してくれ、提案したこと自体を先輩の先生も大変喜んでくれました。

インタビューに答えてくださる上林昌之先生

インタビューに答えてくださる上林昌之先生

どうやったら多くの人にみてもらえるのか?工夫しながら記事を作る児童たち

ICT委員会では、委員会のメンバーにどのような指導を行い、活動をさせていますか?

上林先生:一番大事にしているのは、個人情報の保護です。顔写真や後ろに映り込んでいる人がいないかどうかを、撮影する際に配慮しています。掲載前には、もう一度、他の担当者に確認してもらい、不備がないかをチェックしてもらっています。

他には、人が見たくなるような記事を書くように指導しています。毎回、同じ事柄を扱う記事や、同じ学年について取り上げてばかりだと、特定の対象にしか見てもらえません。写真も見たくなるような画角かどうか、文章も読みやすいものになっているかどうか、考えながら活動をするように指導しています。また、誤字脱字はないか、伝わりやすい文章であるかと、国語的な分野も踏まえて指導をしています。現在、ICT委員会には8名が所属しています。1人あたり、1ヶ月に2本以上の記事をアップすることを目標にして取り組んでいます。活動が始まってから現在までに、30本以上の記事を掲載することができました。記事の中には他の児童へのインタビューが取り入れられていたり、記事の作成者の感想が含まれていたりと、閲覧者の関心を高める工夫がみられますよ。

どのような記事を作成するか児童同士で相談したり、休み時間にタブレットを持って撮影したりしています。児童たちに配備された1人1台端末が、授業外においても、自分たちの活動を記録し伝えるためのツールとして、自然と機能していることも良いと思います。

1人1台端末を持ち、自ら勉強を進める児童の様子

1人1台端末を持ち、自ら勉強を進める児童の様子

一番身近な相談窓口としてのICT担当に

上林先生は、校内の情報(ICT)担当者として活躍されているとお聞きしています。具体的にどのような業務内容なのでしょうか?

上林先生:私は職場におけるICTに関することの一番身近な相談窓口になれたらいいと思っています。先生方のICTに関する困り事は、一度私に伝えてもらい、その場で対応できることはお答えしています。私では対応できないことは外部に繋げています。相談事の多くは、「アプリが消えてしまった」「タッチペンが動かない」「ネットに繋がらない」「プリンタに接続したい」などです。近年、ICTの活用は加速度的に進んでいるので、日頃のちょっとした困りを気軽に聞ける対象が校内にいることが大事だと思います。こうしたことを繰り返す内に、職場全体のスキルが高まり、同僚同士で教え合うような職場へと変化していきます。ICTを日々活用していくことで、先生たちにとっても当たり前のツールに変わっていきます。その内、情報担当という役割は小さくなっていくのではないでしょうか。

他の先生にICT機器の使い方を教える上林先生

同僚の先生にICT機器の使い方をアドバイスする上林先生

どのようにして教員のICT活用指導力を向上させるか

教員のICT活用指導力の向上の取り組みとして、南小学校ではどのようなことが行われていますか?

上林先生:ICTについての校内研修を行っています。1時間くらいのものは年に2回、短いものは月に1〜2回行っています。ですから、年間だと10回は超えます。研修内容は、AIドリルや授業支援システムの使い方など、日々の授業で活用するツールについて扱うことが多いですね。私が情報担当として、ICTについての研修を学校外で受講した後には、職場の先生方に学んだ内容を伝えることもあります。計画的に行うICTについての校内研修だけではなく、日々教え合うという時間もとても役立っていると思います。日々の授業でどうICTを活用するかの相談など、5〜10分くらいの、同僚間でのコミュニケーションも大切にしています。ICTの活用は、未来の日本や世界を生きていく児童たちにとって、とても重要なことだと思います。だからこそ、教員もICTを使う喜びを知り、使いこなせるようになることは大切だと思います。

ICTは先生方との情報共有に欠かせないものになっている

ICTは先生方との情報共有に欠かせないツールとなっている

上林先生自身のICTを活用した授業実践

それでは、上林先生が行う授業では、ICT機器をどのように活用しているか教えてもらえますか。

上林先生:一番よく活用している場面は、前回の授業の振り返りですね。板書の写真をモニターに映し、内容を確認してから本日の課題の把握へとつなげていきます。

情報モラル教育について、大切だと思うことは何ですか?

上林先生:ICTを利用する上でのルールやマナーについては、子どもに伝えるだけでなく、子ども自身が考えることも大切です。同時に、参観日や学校だよりなどを活用し、保護者の方々にも、子どもたちに意識してほしいルールやマナーを考えていただくような機会を提供していくことも大切だと思います。端末を買い与えるタイミング、利用する上での約束、どのアプリを入れ、どのように使用するかなどを保護者の方同士でも話し合えるような機会はとても大切だと思います。

ICT機器を活用した授業は、児童たちの学びへの関心を高め、深めてくれる

GIGAスクール構想が始まり、1人1台端末が配備され、変わったことはどのようなことですか?

上林先生:児童たちのICT機器への抵抗感が少なくなってきていることを感じますね。端末を使い、何かを調べる時、キーボードを使いこなす姿もありました。授業ではアプリを使うことで、私が子どもだった時からすると夢のような学び方ができます。「天体観測のアプリを使うと、昼間でも星空の様子を観察することができたり、地球の裏側の天体まで見るという経験ができたりするので、天体観測をする児童たちの目も輝いていた。」と、理科の授業を行った同僚から聞くこともありました。

ICT機器を活用した授業は、児童たちの関心を高め、学びを深めてくれます。もちろん、使い方次第ではありますが、より自発的に授業に取り組んでくれているという実感があります。教員にとっては、ICTを活用して行う授業に慣れるまで大変な部分も多くあると思います。しかし、GIGAスクール構想は、児童たちの興味関心を高め、学びを深めていく重要な役割を果たしてくれていると感じています。

児童の学習進捗を確認する様子

児童の学習進捗を確認する様子

児童に自ら発信する経験を積ませてあげたい

GIGAスクール構想の中で、先生が今後挑戦していきたいことはどのようなことですか?

上林先生:児童にICT機器を活用し、伝えたいことを発信するような経験を積ませてあげたいと思っています。ICT委員会では、学校のホームページの記事だけでなく、広報部のような立ち位置で活動をしていくのも良いのではないかと考えています。行事や運動会などを取材・撮影することで、いい写真を撮りたいという気持ちだけでなく、自分の将来に結び付けられるようなスキルを高めていく経験ができるのではないかと思うのです。

お話を伺って

発信する際に気をつけなければならない情報モラル(ルールやマナー等)や肖像権などを、ICT委員会の活動を通して、実践的に学ぶことができるという話が印象的でした。スマートフォンやインターネットがより身近にある社会を生きていく児童たちにとって大切な学びだと思いました。情報化社会の中で、必要不可欠なスキルを学校教育の中でも学んでいくことは、ネットトラブルにおける、被害者や加害者にならないために、そして何より、未来の可能性を広げるために、とても重要なことであると感じました。1人1台端末を活用し、学校ホームページの記事を読んで貰える工夫を考え、写真撮影や取材を一生懸命に楽しむ児童たちの様子が、上林先生へのインタビューからたくさん伝わってきました。今もGIGAスクール構想の中で、目を輝かせた児童たちが知識や技能だけでなく、自分の中にあるたくさんの可能性を発見しているのでしょう。皆さんも是非、別府市立南小学校のホームページをご覧になってみてください。ICT委員会の児童たちが作成した記事がたくさん掲載されていますよ。