校務支援システムを効果的に活用する池邉先生が意識していること
- 学校名
- 杵築市立北杵築小学校
今回は、校務支援システムを効果的に活用している杵築市立北杵築小学校 の池邉大志先生にお話を伺いました。池邉先生は令和6年度から大分県内全ての市町村立小・中学校に導入が拡大される校務支援システム「Te-Comp@ss」の導入初期からの使用者でもあります。使用感や、より有効に活用するための考え方などアドバイスもいただきました。
情報担当、体育主任、生活指導と様々な担当を持つ池邉先生
まずは自己紹介からお願いできますでしょうか?
池邉先生:杵築市立北杵築小学校で教師をしている池邉大志です。教員になって今年で8年目です。今年は3年生の学級担任をしつつ、情報担当、体育主任、生活指導の担当を任せていただいています。
わからなければ調べるという積み重ねでICTの効率的な使い方を身につけてきた
ご自身のICTを活用する能力をどのように捉えていますか?
池邉先生:自分では特別秀でている訳ではないと思いますが、周りの先生方から「詳しいね」と言っていただくことはよくあります。パソコンやタブレットなどを使うこと自体が好きなので、わからなかったり、もっと良くならないかなと思ったりした時にそのままにせず、調べてきました。少し便利で効率的な方法を知っているのはその結果だと思います。その方法というのは、とても小さなことだと思います。例えば、パソコンに成績を入力する時、どういう手順で入力すれば効率的なのかとか、逆に入力しなくてもいいところを知っていたり、スペースキーを押せば100と入力されたりするからアクションを減らせる等の小さなことです。このようなことを先輩や後輩からの「教えてほしい!」というリクエストに答えて伝えていっているだけです。
ICTを使った授業をより良いものとするために心がけていることはありますか?
池邉先生:授業の準備をする際に「ここでICTのこれが使えるな、活用しようかな」という思考を常に持っています。ICTを活用するには準備も大事だと思います。授業に向けて写真や動画を撮ったり、スライドを作るなど、細々した作業は気づくと時間が経っていたりするので、早めに授業準備に取り掛かるように心がけています。
校務支援システム「Te-Comp@ss」を使ってきた池邉先生の経験
今回のインタビューの目的の1つとして、校務支援システムの「Te-Comp@ss」についてお伺いすることがあります。令和6年度からこの「Te-Comp@ss」を大分県の全ての市町村立小・中学校が使用し始めるということですが、先生はすでに「Te-Comp@ss」を利用されてきたと伺っています。ぜひ使ってきた経験をお聞かせ頂きたいです。
池邉先生:令和元年度に大分市の小学校に赴任した時が「Te-Comp@ss」を使う最初の機会でした。大分市には「Te-Comp@ss」が導入されていたので、試行錯誤して使い方を習得しました。そこで3年間働いた後、令和4年度に現在の杵築市立北杵築小学校に異動しました。杵築市が「Te-Comp@ss」を導入したタイミングでもありました。
杵築市の同僚の先生方はすぐに対応できていましたか?
池邉先生:「これはどんな時に使うのか?何ができるのか?」といった全体像の把握からがスタートでした。その後、実際の運用の仕方を学んでいきました。皆さん、日々、利用する基本的な機能から覚えていきましたね。ただ、杵築市全体の先生達を対象とした市内の研修や校内研修もあり、新しい校務支援システムに対応するための体制は整えられていました。
杵築市の小学校の変化のタイミングで、すでに「Te-Comp@ss」の使用経験があった池邉先生はどんな役割を担ったのでしょうか?
池邉先生:「Te-Comp@ss」を大分市で活用してきた経験者として、他の先生方をサポートできたらよいと思っていましたね。杵築市の小学校に異動した時に「池邉先生は、大分市でTe-Comp@ssを使っていたらしいですね?何かあったら教えてくださいね。」といった声を掛けられていましたが、実際に質問が増えたのは1学期末に通知表の作成が始まった時です。その時も、入力の箇所や印刷の方法など基本的な操作についての質問がほとんどだったので、問題なく伝えることができました。
校務支援システム「Te-Comp@ss」は何に使えるのか?注意点は?
池邉先生をはじめ、先生方は具体的にどのような業務で校務支援システム「Te-Comp@ss」を活用していますか?
池邉先生:活用の頻度が一番多いのは出席簿の作成や成績処理関係ですね。あとは、児童の学籍や学習・生活の記録となる指導要録も「Te-Comp@ss」を活用して作成します。私自身が小学生だった時の先生方は、全部手書きで通知表を渡されていました。ものすごく、大変だったと思いますよ。今は校務支援システムを利用して、様々な表簿を作成することができます。しかも、データ管理までできますから、とても便利ですよね。
校務支援システム「Te-Comp@ss」を使う時に工夫していることや注意していることはありますか?
池邉先生:システム自体が便利なものだと感じていますが、もっと効率的に使う方法を自分自身で探しています。「便利だな」と実感しながら仕事をしたいですからね。例えばテストの点数を「Te-Comp@ss」に入力する際、全員分の点数をノートに手書きで書いてからパソコンに入力する先生もいますが、私はパソコンの下にテスト広げ、丸付けしたその時にパソコンに入力しています。そうすれば、成績処理の作業工程が1つ減らせますよね。校務支援システムの導入や、その機能に合わせて、これまでの業務のスタイルを変化させるという発想が大事だと思っています。校務支援システムの導入により便利になった事務作業ですが、注意していることもあります。数値やテキストの入力ミスやデータの紛失、流出がないように心がけています。
どの学校に行っても同じ校務支援システムを使えることは長い目で見て大きなメリットがある
令和6年度から大分県の全ての市町村立小・中学校が、同じ校務支援システム「Te-Comp@ss」を利用することについてはどう思いますか?
池邉先生:良いことだと思います。私は初任で中津市の小学校に赴任したのですが、その時は別の校務支援システムを使っていました。それから大分市の小学校に異動し「Te-Comp@ss」を使うことになり、使い方を1から覚え直しました。どこの学校でも、表簿の作成などの事務作業の内容は、ほとんど同じなのに、導入されている校務支援システムが各市町村で違う場合は、何度も作り方を覚えないといけないのは効率的ではないですよね。たしかに、校務支援システムを導入する際、新しいことを覚えたり、今までの業務スタイルを変化させたりすることは、楽ではありません。しかし、新しい校務支援システムを導入する際の変化に対応するはじめの1年を乗り越えれば、大きなメリットにつながるのではないでしょうか。
指導要録の原本の電子保存による校務の情報化の推進について
令和5年4月に文部科学省より「指導要録の原本の電子保存による校務の情報化の推進について」という通知が出されたことが話題になりました。池邉先生は、この通知をどのように捉えていますか?
池邉先生:これまでも指導要録についてはICTを活用して作成することができていました。しかし、押印の必要があるため、紙に印刷して、押印したものを原本として保管していました。今回の通知では、押印を省略できる指導要録の様式が示されました。指導要録の原本の電子保存の大きなハードルがなくなったと思います。これにより、大分県内だけでなく、全国的にも、指導要録の原本の電子保存が一気に進むのではないでしょうか。私が以前勤務していた大分市の小学校は全校児童数が1200名程でした。指導要録への押印は必須でしたので、校長先生は、指導要録だけで約1200回の押印をしていました。当時の、校長先生は手を痛めてしまい、サポーターを着けながら押印をされていましたね。指導要録の原本の電子保存による校務のDX化は素晴らしい流れだと思います。押印と印刷の省略の流れは、今後、他の表簿に対しても、大きな流れとしてつながっていけば良いと思います。
現場の気づきや要望を反映させ、進化し続ける校務支援システムであってほしい
今後、校務支援システム「Te-Comp@ss」の機能や活用方法で、実現したら良いと思うことはありますか?
池邉先生:「Te-Comp@ss」についての意見や改善点を、気軽に届けられるような仕組みがあったら良いと思います。使っているその時は「こうだったらいいな」と思ったとしても、いざ聞かれたら思いつかないものです。システムに対する意見を集めるのは、年に1度とか学期に1度といった頻度ではなく、ユーザーが、気づいた時に気がついたことを送信できるような仕組みが理想だと思います。私が思いつく校務支援システムの改善点は、小さなことばかりです。表記が色分けされていた方が間違いにくいだとか、入力項目の並べ方が違った方が効率的になるとか、本当に小さな気づきだと思います。こうした小さな気づきでも、改善されれば、大きいことにつながると思うのです。大分県内だけでなく、全国的に「Te-Comp@ss」を使用しているユーザーの気づきや要望が、システム開発している会社に伝わり、バージョンアップや新機能開発に反映されていくような仕組みが大切だと思います。
ICTを活用し、授業改善と校務のDX化に取り組んでいく
ICTに関わることで、今後挑戦していきたいことはありますか?学級担任として、そして校内の情報担当としての思いをお聞かせください。
池邉先生:教師として何より大切なことは授業改善を進めていくことだと思います。ICTを活用することで、もっとわかりやすく、楽しく、児童が主体的に学べるような授業を作っていきたいです。特にICTが活躍するのが、児童達にとって理解が難しい単元です。例えば、高学年の算数の文章問題などでICTの力を借りることが多いです。スライドを使い、アニメーションを動かすことで、児童たちに、問題文の中で何が起こっているのか視覚的に伝えています。文章だけを読み上げた段階では困ったような顔をしていた児童達も、アニメーションを見た途端、スッと晴れたような表情になるのです。ICTを活用していて良かったと思いますね。また、ICTを使った授業準備は保存と共有がしやすいからとても便利です。次年度以降、また同じ担当学年になった時に、1から作るのではなく、反省を反映してアレンジしつつ再利用することができますよね。また、次年度に限らず、別の教科、別の単元でも応用して使えることがあります。ICTを活用した授業準備の実績を積み重ねていくことで、授業改善も校務のDX化も進んでいくと思います。校内の情報担当としては、研修で学んだことや、自分が発見したICTについての知識や技能を、同僚に広げていきたいですね。業務時間の短縮はICT活用への些細な気づきを積み重ねることで実現できると思います。自分が「便利だな」と思うことは同僚に広げていき、ICTを活用した業務の効率化を学校全体で進めていく。そして、教師として本当に大切にしていきたい、児童理解や授業改善に時間を使い、情熱を注いでいこうと思います。
まとめ
今回、池邉先生にお話を伺うことで、校務DX化については、ICT機器の環境整備やシステムの導入といったハード側からのアプローチだけでなく、ICT機器やシステムの運用方法も大切であると気づかされました。「便利だと実感しながら仕事をしていきたい。そして、ICT活用によって時間を生み出し、児童理解や授業改善に力を注いでいきたい。」とお話をする池邉先生の笑顔がとても印象的でした。これからも池邉先生は、ICTを活用しながら、効率的に仕事を進めていき、児童理解や授業改善の時間を生み出していくのだと思います。そして、その喜びを多くの先生方に伝えていくのだと思いました。