大分県立大分東高等学校
~オブツーサの培養に適した培地作り~
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学校・学年
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高等学校
大分県立大分東高等学校
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発表形式
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レポート・論文
研究の概要
オブツーサの培養に適した培地作りを目的とた、先輩の研究を引き継いだ課題研究。
生徒のアウトプット
- 実践の背景
- オブツーサの培養に適した培地作りを目的とする。理由としては、去年の先輩方の課題研 究のオブツーサと玉扇(ぎょくせん)の実験結果を見ると支持剤は寒天のみの使用で培地を 作っていた。私達はその結果を見てオブツーサの成功率が低いことに気が付き、その原因は 支持剤として使用した寒天なのではないかと考えた。そこで、支持剤の中で寒天のみを使った培地だけではなくゲランガムも使った培地を作成して実験を行おうと考えた。さらに、寒 天とゲランガムの比率を調節することでオブツーサの培養に適した培地を見つけることが できるのではないかと考えた。
- 調査・研究内容
- 材料及び試験方法
(1)供試品種
ユリ科ハオルチア属:「オブツーサ」
(2)材料の特性
科名:ユリ科(アロエ科)
属名:ハオルシア属
原産地:南アフリカ
特徴:夏型種で透明度が高く、先端がぷっくりしていること。葉先を切ると「窓」 といわれる透明な部分がある。
(3)試験期間
令和 3 年 4 月~令和 4 年 2 月
(4)試験場所
バイオ室
(5)試験区
1 回目の実験
ホルモンフリー個体(250ml)
試験区 支持剤(g)
A ゲランガム:2.5 寒天:0
B ゲランガム:2.5 寒天:2
C ゲランガム:1.5 寒天:1
D ゲランガム:1 寒天:1.5
E ゲランガム:3 寒天:0
植物ホルモン有(250ml)
試験区 支持剤(g) 植物ホルモン(ml)
A ゲランガム:2.5 寒天:0 NAA:0.4 カイネチン:0.8
B ゲランガム:2.5 寒天:2 NAA:0.4 カイネチン:0.8
C ゲランガム:1.5 寒天:1 NAA:0.4 カイネチン:0.8
D ゲランガム:1 寒天:1.5 NAA:0.4 カイネチン:0.8
E ゲランガム:3 寒天:0 NAA:0.4 カイネチン:0.8
オーキシン類のカイネチンをサイトカイニン類のナフタレン酢酸より多く入れることで不 定根を誘発させることができる。
試験方法
(1)①使用培地:MS培地
オブツーサの葉片を使い器官の再分化率を調べる。
ホルモンフリー個体・ホルモン有の培地作成。
(2)試験手順
① 実験を行う前に材料を中性洗剤で洗う。
② しっかりすすいだ後に、次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素 12%)を 20 倍に希釈 し殺菌する。
③ 殺菌後、滅菌水で 3 回すすぐ。
④ 5mm 程度の外植体を摘出し、培地上に置床する。
月別活動実績
月 活動内容
4・5月 研究テーマ検討・計画作成
6月 MS 培地の調製・培養、観察
7月 培養、観察
8~10 月 ホルモン入りの MS 培地作成・培養、観察
11 月 まとめ・論文作成
12 月 発表原稿・プレゼンテーション作成
1月 研究発表・論文提出
研究経過
・12 月 20 日に継代培養を行った。行った試験区は、B区 1 本・D区 1 本・E区 3 本
B区:不定根の継代培養
D区:不定根の継代培養
E区:不定根と不定芽の継代培養
- 結論
- 結果
(1)以下の表はホルモンフリー個体とホルモン有の培地調製日・培養日をまとめたもので ある。
ホルモンフリー個体 ホルモン有
試験区 培地調製日 培養日 試験区 培地調製日 培養日
A 6 月 11 日 6 月 15 日 A 8 月 26 日 8 月 30 日
B 6 月 18 日 6 月 21 日 B 9 月 3 日 9 月 7 日
C 6 月 29 日 7 月 2 日 C 9 月 3 日 9 月 7 日
D 7 月 5 日 7 月 6 日 D 9 月 10 日 9 月 13 日
E 7 月 9 日 7 月 12 日 E 9 月 10 日 9 月 13 日
F 7 月 9 日 7 月 13 日
・ホルモンフリー個体はA区からF区まで 6 区作成した。
(2)以下の表は、ホルモンフリー個体・有の実験結果をまとめたものである。
ホルモン無(250ml)
試験区 支持剤(g) 結果(成功率/培養数)
A ゲランガム:2.5 寒天:0 1 本/25 本
B ゲランガム:0.5 寒天:2 0 本/25 本
C ゲランガム:1.5 寒天:1 1 本/23 本
D ゲランガム:1 寒天:1.5 0 本/25 本
E ゲランガム:3 寒天:0 0 本/25 本
F ゲランガム:2.5 寒天:0 0 本/25 本
A区:外植体を殺菌することを忘れていたためコンタミが多数発生した。1本残し後は廃棄 処分にした。新しく試験区を作った。名称をF区とした。残した 1 本から約二か月後に不定 根を確認。
B区:分化せずに枯れていった。
C区:培養して約 2 か月後不定根・不定芽を確認。
D区:次亜塩素酸ナトリウムの消毒時間を 5 分から 8 分に延長した。 E区:次亜塩素酸ナトリウムの消毒時間を 5 分から 8 分に延長した。 F区:次亜塩素酸ナトリウムの消毒時間を 5 分から 8 分に延長した。
試験区 コンタミ数(ホルモンフリー個体)
B 3 本
C 14 本
D 8 本
E 5 本
F 3 本
合計本数 33 本
【反省点】
・コンタミ数が多くでてしまったこと。特にC区に多く見られた。
・多くの外植体が分化しないまま枯れてしまう個体が見られたので最初からホルモンを入 れておくことを考えていた方が良かった。
【良かった点】
・ホルモンフリー個体でも分化することが分かった。
2 回目の実験
植物ホルモン有(250ml)
試験区 支持剤(g) 植物ホルモン(ml)
A ゲランガム:2.5 寒天:0 NAA:0.4 カイネチン:0.8
B ゲランガム:2.5 寒天:2 NAA:0.4 カイネチン:0.8
C ゲランガム:1.5 寒天:1 NAA:0.4 カイネチン:0.8
D ゲランガム:1 寒天:1.5 NAA:0.4 カイネチン:0.8
E ゲランガム:3 寒天:0 NAA:0.4 カイネチン:0.8
試験区 結果(成功率/培養数) カルス形成
A 5 本/25 本 0 本/25 本
B 3 本/25 本 0 本/25 本
C 2 本/25 本 1 本/25 本
D 1 本/25 本 0 本/25 本
E 8 本 25 本 0 本/25 本
【A区からE区のまとめ】
A区:E区の次に不定根数が多い。
B区:一つだけ大きく分化している個体があった。分注した際に培地の色が変わっていった。
C区:1 本だけカルスが形成されていた。この区のみ不定根・不定芽の確認ができていない。 分注した際に培地の色が変わっていった。
D区:AからEの中で一番分化数が低い。培地が固かった。
E区:試験区の中で一番分化率が高い。
試験区 コンタミ数(ホルモン有)
A 11 本
B 3 本
C 6 本
D 2 本
E 9 本
合計本数 31 本
【表から分かること】
・A区が一番多く 11 本だった。次に多いのはE区で 9 本だった。一番少ないのはD区で 2 本だった。
【反省点】
・コンタミの本数がホルモンフリー個体とあまり変わらなかったこと。
・コンタミが多く培養した本数が少ない状態から不定根が増え始めたのでコンタミを出さ ないように培養するべきだった。
【良かった点】
・ホルモンフリー個体の時より不定根が多く見られたこと。 特にE区が多く分化していて合計 8 本の不定根が確認できた。
・ホルモンフリー個体と比較すると成長速度も速く分化するまでに時間がかからなかった こと。
・分化しないまま枯れていく個体がホルモンフリー個体と比べ減ったこと
写真から分かることとして試験区Bでは、左側の写真で上側に少し不定根らしきものが出ていること。右側の写真では変化は見られなかった。C、D、E区も同様変化は見られなかった。
以下の表は、器官の再分化率である。
ホルモンフリー個体の再分化率(全体) 植物ホルモン有の再分化率(全体)
1.3% 2 本/150 本
15.2% 19 本/125 本
<表から分かること>
全体で比べた時にホルモンフリーよりも植物ホルモン有で培地を調製したとき再分化率が 良いことが分かる。
もともとはホルモンフリーのみで実験を行う予定だったがなかなか変化が見られずに枯れ ていく個体やコンタミがたくさん発生した。このことから植物ホルモンを入れての実験に 変更となった。成功率は変わらず 40%~50%だろうと予想を立てたが植物ホルモンの再分 化率の全体の平均としては 15.2%という結果になり予想の半分以下の結果となった。
以下の表は植物ホルモンを使った試験区の再分化率を表したものである。
試験区 支持剤(g) 不定根が分化した個体数 成功率
A ゲランガム:2.5 寒天:0 5 本 20%
B ゲランガム:2.5 寒天:2 3 本 12%
C ゲランガム:1.5 寒天:1 2 本 8%
D ゲランガム:1 寒天:1.5 1本 4%
E ゲランガム:3 寒天:0 8 本 32%
植物ホルモン:NAA 0.4ml カイネチン 0.8ml
<表から分かること>
ゲランガムのみを使用した培地は 20%以上と予想の半分以上となったが寒天と一緒に使用 し実験を行ったときは 15%以下という結果になった。
ゲランガムよりも寒天の方が多いと分化した個数が少ないことが分かる。
以下の表は、コンタミの発生率をまとめたものである。
ホルモンフリー個体のコンタミ発生率(全体) 植物ホルモン有のコンタミ発生率(全体)
26.4% 33 本/125 本 24.8% 31 本/125 本
<表から分かること>
成功率はもともと40%~50%のあいだだと予想していたが、大きく予想が外れた結果 となってしまった。この結果の原因として、コンタミがたくさん発生したことだ。コンタミ が発生した理由として培養する際のピンセットの殺菌がよくできていなかったことや試験 管のふちに外植体が接触してしまったことなどがあげられる。
中間の経過及び問題点
去年の先輩方の実験が19%だった理由として挙げられるのは培地と外植体の相性が合わ なかった可能性がある。その理由として、寒天に含まれる生育阻害物質があることだ。 生育阻害物質とは、フランカルボン酸である。フランカルボン酸は、人および種のある動物 によるフルフラールの代謝生成物として知られている。
考察
結果から、オブツーサに適した培地は、植物ホルモンを入れたE区のゲランガム(3g) のみの培地だと考えられる。その理由は 2 つある。1 つ目は、ほかの試験区と比べても成功 率が高いことがあげられる。E区の成功率は 32%だった。一番低いD区の成功率は4%だ った。使った支持剤はゲランカム 1g、寒天 1.5g 使用した。2 つ目は、なぜ、成功率に差が 出たのか。その理由は、5でも上げている通り寒天に含まれている生育阻害物質が原因だ。 実際にA区、E区では寒天を使用せずにゲランガムのみでの実験を行っている。すると、成 功率はA区 20%、E区は 32%という結果が出た。ゲランガムと寒天を合わせて使用した時 の成功率はB区 12%、C区は 8%という結果が出た。 - 今後の課題
- まとめとして、オブツーサに適した培地はE区だという可能性高いということが分かった。 今後の課題として、ホルモンの組み合わせを変える、ホルモンの量を変える、支持剤の量を 同じにする。
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