大分県立三重総合高等学校
コンポストを用いて作成した「花肥」リン酸肥料の可能性を探る
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学校・学年
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高等学校
大分県立三重総合高等学校
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発表形式
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レポート・論文
研究の概要
生ごみを食料廃棄物として捉えるのではなく、「循環させる資源」として活用を考えた。そこで「コンポスト」を設置し、草花の肥料である「花肥」としてリン酸肥料が作れるか研究を行った。花の開花に合わせたりん酸分を多く含む肥料をつくることができた。
生徒のアウトプット
- 実践の背景
- コロナ禍により外食する機会が減り、中食・内食をすることが増えています。そのような中、家庭内の生ごみの量が増えていると自覚している人が48%いるという統計を目にしました。私たちは、持続可能な開発目標(SDGs)の項目「⑫つくる責任、つかう責任」の視点から、この生ごみを食料廃棄物として捉えるのではなく、「循環させる資源」として活用することを考え、「コンポスト」を設置し、堆肥を作ることを考えました。「コンポスト」とは、農産物や食料廃棄物などの有機物を微生物の働きで分解させ堆肥にする処理方法のことです。何千種類もの微生物が複雑な生態系をつくり、栄養豊富な堆肥ができ上がります。この堆肥を使って草花を育てたいと考えました。草花には「花肥」と呼ばれるリン酸肥料が必要となります。コンポストを用いることにより「リン酸肥料」が作れるのかを検証します。具体的な方法として本校で使用している化成肥料と落ち葉や枯れ草を利用した「草木灰」とを比較し、対照研究を行い、実用性を検証します。
- 調査・研究内容
- 研究内容
(1)供試材料:シクラメン、パンジー、ビオラ
(2)研究場所:6号ハウス
(3)試験期間:5月~11月
(4)研究計画
3月
4月 研究立案
5月 研究準備 |
6月 | コンポスト作成
7月 栽培管理・生育調査 草木灰作成
8月 | ↓
9月 |
10月 ↓
11月 データ整理 |
12月 ↓ 卒業論文作成
1月 ↓
(5)調査項目
(シクラメン)葉の枚数 ※その他の観察項目:葉の濃さ・葉の大きさ・開花数
(パンジー・ビオラ)株の大きさ ※その他の観察項目:花の大きさ
(6)研究試験区:A.コンポスト試験区・B.草木灰試験区・C.本校使用肥料試験区
研究方法
①-1
本校で栽培したトマトなどの残渣と菌床土を混合してコンポストを作成する。
①-2
落ち葉や除草作業で出た枯れ草を燃やし、草木灰を作成する。
②A.コンポスト試験区・B.草木灰試験区・C.本校
使用肥料試験区を設け、シクラメン3株、パンジー・ビオラ8株を栽培し、それぞれの生育調査を行う。 - 結論
- 研究結果
シクラメンは「冬の鉢花の女王」と言われ、冬の寂しくなりがちな季節を彩る代表的な鉢花で、株の中心から豊富に上がる花が好まれる。葉の枚数と花芽数が比例することから、生育の良し悪しの判断は葉の枚数に着目し調査した。また、枚数だけでなく、葉色が濃く、大きさがそろっているかどうかも観察した。パンジーとビオラは、大きな株を目指した。過繁茂等の結果が見られなかったことから、肥料の3要素成分が過剰に含まれていたとは考えられず、不足分を検証した。
感想
仮説を立てて研究を開始したが、生育状況を見ながらコンポストにふさわしい残渣が何にすべきだったのかなどが次々と浮かんできた。「開花」だけでなく、植物の生育過程の全体を見据えて研究を進めることの大切さを理解できた。先を見据えて行動することを今後大切にしていきたい。本研究を通して少しずつ変化する植物の状態を観察する過程は楽しかった。 - 今後の課題
- 肥料の3要素はそれぞれ「N:葉肥・P:花(実)肥・K:根肥」とよばれる。試験区Aのコンポスト肥料は、比較的にPの多いトマトの残渣を利用して良好な「開花・結実」を目指したが、結果的には商品価値が高い個体を得ることはできなかった。また追肥も行わなかったため、窒素成分が不足し、葉の色が黄化した。試験区Bの草木灰はカリウムが多く含まれているため、根が成長し、良好な結果が得られた。この結果から、まずは元肥として「根」を育てる「草木灰」を使用し、その後追肥として「花」を育てるコンポスト肥料を用いたらよかったのではないかと考える。また、コンポストにはトマトよりもPの成分を多く含むブロッコリーやサツマイモ、サトイモなどの残渣を利用するとよいのではないかと考えた。基準区として設けた試験区Cでは、化成肥料を入れる時期が遅れ比較する個体ができなかった。
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