大分県立大分舞鶴高等学校

微重力環境と寒天培地が植物に与える影響

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高等学校
大分県立大分舞鶴高等学校

発表形式

レポート・論文

研究の概要

実験1

この実験では寒天培地を使用するにあたり、二十日大根に対する寒天培地の有用性を確かめるため複数の条件下で二十日大根を栽培し、観察する実験を行った。

準備物

・寒天培地・液体肥料 500mlペットボトル・二十日大根の種

手順1

寒天の作成時に寒天の粉の量を調節し、硬め、普通、柔めの3種類の硬さの寒天培地を作成した。また、液体肥料を用い、与える量を調節することで0,1.21.5mlの3種類の培地、計9種類の寒天培地を用意した。

手順2

 9種類の寒天培地に同じ種類の二十日大根を埋め、無菌状態、温度一定の環境下で育て1週間ごとに成長の経過を観察、記録し、それを合計60日間続けた。

.1柔らかくした寒天培地

図2.標準硬度の寒天培地

図3.硬くした寒天培地

実験2

微重力環境を作り出す装置である『三次元クリノスタット』の作成を行った。クリノスタットとは、2つの軸を別方向に回転させることで重力の方向を連続で変化させ、中心の試料にかかる重力を分散させて微小重力を作り出すことができる装置である。

図5.クリノスタット作成途中

手順1

土台・支柱・枠の木材を用意し、釘や接着剤で固定した。また、同じ種類のモーターを2つ用意し、枠の上部と支柱に固定した。

手順2

 枠の上下の重さを揃えるため、モーターとは反対の部分に粘土でおもりをつけた。また、回転をスムーズにするためモーターの部分にそれぞれベアリングを設置した。

結果 (実験1)

<7日目>

・すべての実験体において発芽が確認できた

・すべての実験体間において成長の速度に違いが見られた。しかしこの時点において肥料の濃度と寒天の濃度とに関連性は見られなかった。

・栄養を集中させるため間引きをし、1容器に1本の苗に残した。


図6.7日目

 <14日目>

・3種類にすべてに成長が見られた。

・肥料が0mlの二十日大根の成長がよく見られた。

・根本に大根らしきものは確認できなかった。

図7.14日目

<21日目>

・肥料0mlの二十日大根が弱ってきた。

・全体的に弱ってきた。

<28日目>

・成長に変化は見られなかった。

・根本に赤いふくらみが見られた。

・それ以降、背の高さに成長は見られなかった。

図8.28日目   

<60日目>

・寒天培地の二十日大根には大根はできなかった。

 ・寒天培地と同じ条件下の土で作った二十日大根には小さい大根が完成した。また、寒天培地で育てた、   二十日大根にも同じような二十日大根が完成した。

図9.土で育てた二十日大根

 10.寒天培地での栽培で根本が膨らんだもの

時間経過と成長速度をグラフに表わすと以下のようになる。

グラフ1.柔らかくした寒天培地

グラフ2.ふつう寒天

グラフ3.固い寒天

結果(実験2)

装置は完成したが、外部指導の方の指摘により改良点が多く見つかったため、実験を行うことはまだできなかった。

11.クリノスタットの略図

改良点とその理由

・木材は強度が足りないため、L字フックで固定する必要がある。

 ・今までは中のコードが回転する際に絡まるのを防ぐために電池を用いて回していたが、すぐに電池切れになり、長時間電力を供給できないという問題点からスリップリング装置を用いる必要がある。

12.スリップリング装置の略図

・スリップリング装置とは、回転体に外部から電力・電気信号を伝達することができる回転コネクタであり、回転体に配置された金属製リングとブラシを介して電力や信号を伝達する装置である。

 

考察

成長が止まるまでにかなりの時間を要したにもかかわらず二十日大根が育ちきることはなかった。このことから、寒天培地に栄養不足、また寒天培地などの硬さなどに何かしらの問題があったと考えられる。クリノスタットについては試作を重ね完成することができ、二方向への回転を行うことが出来た。しかし、安全面、耐久面、持続性では課題が見つかり、改良していく必要がある。

生徒のアウトプット

実践の背景
これからの未来、「火星移住計画」のような人類の宇宙進出に関わる国家戦略はますます加速する。しかしそこには食料調達の手段、気体の循環を行う植物栽培が不可欠であると私たちは考えた。そこで私たちは寒天培地を用いて多種多様な植物をいくつかの条件下で栽培した。その結果、中性の培地で栽培すると土で栽培するよりも時間はかかるが二十日大根の根が膨らみ一般的な二十日大根と遜色ないものができた。また、微重力環境を再現するために3次元クリノスタットを自作した。
仮説
動機
私たちは宇宙環境で植物を育てると植物の根はどのように伸びていくか、また、その環境が植物の細胞壁に与える映響について興味を持ちこの研究を行った。

目的
クリノスタットの作成及びそれを使用した微重力環境下における植物の栽培、また寒天培地による栽培が植物に与える影響を調べる。
結論
寒天培地だけでは栄養素を加えたとしても、植物が育つのに土で育てるよりも大幅に時間がかかっただけではなく、育ちきらなかった。また、クリノスタットは身近な材料で安価に製作することができる。
今後の課題
肥料や寒天の硬さと二十日大根の成長には関連性は見られなかったが、それは実験回数が少なかったため、さらに回数を重ね、関連性があるのかについて調べる必要がある。今回の研究では二十日大根の一種類しか栽培する機会がなかったので、今後の展望としてより寒天培地の栄養価を高める方法を確立し、様々な種類の植物を寒天培地で効率よく育てられるようにする。寒天培地だけで植物を育てるためには今回とは栄養の加え方もしくは、寒天培地の固さの設定を変える必要がある。また、クリノスタットを用いて微重力環境を再現し、その環境のなかで植物を育てることにより微重力環境において植物に与えられる影響を観察する。

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