大分県立鶴崎工業高等学校3年
鶴工 NOREN de SDGs世界に誇るインテリア
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学校・学年
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高等学校
大分県立鶴崎工業高等学校
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発表形式
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レポート・論文
研究の概要
暖簾という伝統をこの先も残していくために日本の四季を感じることができる草木染めを使って、現代の洋風な家に合う暖簾を作ろうと考えた。また、現在SDGsの考えが拡がっているため、SDGsの17目標の一つである12番の「つくる責任つかう責任」に着目した。
生徒のアウトプット
- 実践の背景
- 「日本が世界に誇るインテリア」として暖簾(のれん)があります。昔は暖簾といえば身近なものでしたが、今ではあまり見かけることも、家で使うことも少なくなりました。そこで、暖簾という伝統をこの先も残していくために日本の四季を感じることができる草木染めを使って、現代の洋風な家に合う暖簾を作ろうと考えました。また、現在SDGsの考えが拡がっているため、SDGsの17目標の一つである12番の「つくる責任つかう責任」に着目しました。
- 調査・研究内容
- 実施計画
調査研究(4月~7月)
実験(7月~9月)
暖簾デザイン案(9月~10月)
暖簾作成(10月~11月)
発表準備(12月~1月)
制作物
・暖簾(3点) ・エコバック
・服(2着) ・ストール
染料の原料とした植物
・葛の葉 ・ぶどう
・紅茶 ・アカシソ
・アオシソ ・たまねぎの皮
・ターメリック ・コーヒー
・びわ ・アボカド
染色方法
植物を採取
草木染めの染料となる植物を採取します。私は実際に、びわの葉とアオシソを採取しました。(アオシソは学校の畑園にて)たまねぎの皮やぶどうの皮などは家で少しずつ溜め、保管していたものを使いました。
布の下処理
染料はたんぱく質と反応して繊維を色づけていますが、綿や麻は植物で出来ているため、たんぱく質が含まれていません。そこで、豆乳や牛乳を使って人工的にたんぱく質を布に染み込ませますが、今回は豆乳を使用しました。豆乳を1対1の割合の水で薄めた液に布を浸します。何度か動かしながら20分間浸して、脱水して日陰で干します。
植物を煮て染料を作る
植物が浸かるくらいの水を入れ、1時間ほど煮ます。煮汁をこして完成です。それに布を入れ、均等に染まるように動かしながら、布を20分ほど煮て染めます。染める際の温度が高くなるほど、鮮やかな色に発色し、染める時間が長いほど濃く染まります。
媒染剤を作る
媒染剤とは、植物の色を布へ定着させるために、繊維を処理するための材料です。媒染剤は主にアルミ(みょうばん)・銅・鉄の3つあり、使う媒染剤により染め上がりの色味が変わります。焼きみょうばんは市販のものを、銅媒染・鉄媒染は手に入れることができなかったので自分で作りました。1:1:1となるように銅か鉄、酢、水を入れ1週間ほど日の当たらないところに置いておきました。この媒染剤に布を30分ほど浸けておきます。
仕上げ
布から色が出なくなるまで水で洗った後、日陰で干して乾かします。アイロンをかけて完成です。
暖簾の制作過程
今回は暖簾を3点作成しました。
家で使用すると仮定し、すべて部屋を仕切るためのものです。条件としては、部屋(ウォークインクローゼットなども含む)に目隠しとして使う、また人の邪魔にならない事です。
暖簾の色の組み合わせを決める
1つの染料を3つの媒染剤で色の違いを出し、縦340mm×横200mmの大きさにした晒を30枚作りました。同じ染料で3枚作ったものをみょうばん・鉄・銅の順番で縫い合わせ、10枚作りました。これをどう配置するかでイメージが全く異なるので数パターン考え、デザイン系ドローソフトである「Adobe Illustrator」で制作してみました。それから色の組み合わせを決定し、縦1500mm×横900mmの暖簾を作成しました。
現代の家に合わせた暖簾
・サイズ設定
先ずは、現代の家のつくりを研究したかったので、「hit明野住宅展示場」に足を運び、3軒の家を見学させていただきました。その結果、現在は平屋の一軒家が多く、天井が高いことが分かりました。昔の家は主に200cmでしたが、現在の家は220cm~260cmに高くなっています。また、少子高齢化のこの時代に最期まで家で過ごすために、車椅子で家の中を自由に移動できるように100cmの幅で家を設計しているトヨタホームを参考にさせていただきました。そのため、天井の高さを240cm、幅は100cmに設定しました。暖簾の大きさは長さを変えて数パターン作りました。車椅子に乗って暖簾を使用する際にタイヤに暖簾が絡まないようにするためにドアの大きさと車椅子を描き、その上に少しずつ長さを変えた暖簾を載せて、全体のサイズ感を調整してみました。そうして長さは150cmに設定しました。
※今回はどうしても布が足りなかったので、作る際に横幅100cmのところを85cmに変更しました。
・暖簾のデザイン
暖簾を作るにあたって現代の家に合うデザインを考えました。布を織って輪ゴムで縛ったり、ビー玉を入れ、輪ゴムで縛ったりして、それが水の波紋のように見えるようにしました。これがいわゆる「絞り染め」です。
暖簾を作るためにまずはエコバックを作って、インターネットだけを参考にせずに実際にどのようなデザインになるのか試してみました。5パターンほど作ってみて、ゴムの縛る加減や間隔なども調べました。それによっていくつかあったデザインから雨が池に降り注いで水の波紋を作っているようなデザインにしました。
・色の組み合わせとデザイン案
色の組み合わせをいくつか考え、40パターンに絞り考えました。それから住宅展示場で撮影した写真を基にその部屋に合うように色の組み合わせを決めました。次に現代の家に合ったデザイン案を決めるために、決定させた色の組み合わせにデザインをのせてみて、左右どの位置にデザインがあったらいいかを考えました。数パターンできたものを、撮影した写真に組み合わせてみて1つに絞りました。このようにしてデザイン案を決定させて実際に作りました。
暖簾以外の活用法
暖簾はお店の出入り口や部屋の間仕切りに使われるもの、というように使い方が決まってしまっていると思いました。私は暖簾をより多くの人に知ってもらうために、本来以外の使い方を提案しようと考えました。そこで、草木染めの四季を感じることができるタペストリーを提案しました。暖簾を縫い合わせずに1つひとつに分けて、それぞれをバラバラに使えるようにしました。それにより、左右違う色にしているので、1つだけ飾ることも出来ますし、2つ組み合わせても使えます。タペストリーにすることで何も無かった壁が明るくなります。絵などの立体物であり、カラフルなものではなく、自然の色であるので生活の邪魔になりません。また風により、ふわりと靡くことがポイントです。設置の方法としては、突っ張り棒で設置したので、壁に穴を開けることなく簡単に取り付けることができました。賃貸などで壁に穴を開けることができない人や、壁を傷つけたくない人が穴を開けずに簡単に設置できるこの方法を提案しました。 - 結論
- 実際に使用してみて
家で実際に使用してみました。今回は部屋の出入り口に突っ張り棒で設置し、簡単に1人で設置することができました。サイズは縦1500mm×横900mmの暖簾を使用しました。使用してみると思っていた以上に布が体にまとわりつくことが分かりました。私はいつも部屋のドアを開けっぱなしにしているので暖簾をつけることによって目隠しになりました。布が1枚入るだけで目隠しになると思っていなかったのでこれには感動しました。また、宅配便が来た時にドアを閉めずにそのまま出ることができました。雰囲気も一気に明るくなったので部屋だけでなく廊下も気分が上がるようになりました。
まとめ・感想
暖簾はミシンを使って縫い合わせました。ミシンを使ったことでゆがむことなく縫うことができ、はっきりとした暖簾が仕上がりました。それまでに何度も縫う場所を間違えたり、設計ミスをしたりしましたが、ミシンのことや布の性質も学ぶことができ、また別の知識も身に付けることもできました。新しい暖簾の使い方を提案したことによって、ものを見るときにそのものだけの使い方だけでなく、こうして使ってみるのもいいかもしれないと考えるようになりました。
また、この研究を通して自然に触れる機会が増えたことも私の中でプラス材料となりました。私は元々、幼い頃から外に出ることが少なく、高校生となってからはスマートフォンに依存しがちとなり、より家で過ごすようになりました。しかし、今回、課題研究として草木染めをすることによって自然に触れることができました。また、今まで知らなかった植物を知ることや見たことのない虫も見ることができました。草木染めで四季折々の自然の色を知ることだけでなく、自分で採取できるため、山や森に入って自然に触れたため、春夏秋冬を楽しめました。また、SDGsのことは薄々と知っていましたが、詳しくは知りませんでした。今回はそれが大きなテーマだったので、SDGsを深く調べ、詳しく知ることができました。国家レベルではなく、私1人でも出来ることがあるのだと分かりました。2030年までにSDGsをクリアするためには1人ひとりが常に考えておかなければいけないと思いました。私はこれからも他人事だとは思わずに、モノを購入する際は捨てるそのタイミングも考えたり、別の活用法を考えたりしてSDGsを意識していきたいです。
過去から現在まで脈々と受け継がれてきた暖簾の伝統を現代の生活水準に合わせて、デザインや色の組み合わせを考えることはとても面白かったので、これからも日本の伝統を調べて学んでいきたいと思います。
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